Asia Pacific (Japanese)

フェデックス、自動消火システムの導入により機内における安全性を向上

フェデックス コーポレーションの子会社であるフェデックス エクスプレス(フェデックス)は、洋上(国際線)経路における貨物機の安全性を向上する、業界初の機内自動消火システム(Fire-Suppression System: FSS)の導入を発表した。フェデックスが7年もの歳月をかけて独自に設計・開発した消火システムは、同社の取り組む安全性の向上に一層寄与するものである。

フェデックスの戦略プロジェクト部門マネージング・ディレクターであるジョエル マードックは、「機内の乗務員と貨物の安全性確保が最優先事項である当社にとって、この最新式消火システムの自社開発は当然の流れでした。7年をかけて設計・開発したFSSが当社保有機に搭載され、さらなる安全性の向上に寄与することを大変誇りに思います」と述べている。

フェデックスでは、2009年4月より国際路線の主力機であるMD-11型機にFSSの搭載を開始しており、2011年初頭までに59機に設置する予定である。また、2010年初頭には、新たに国際運航を開始するボーイング777型機にもFSSの搭載を開始、計74機の洋上経路を飛行するワイドボディ貨物機にFSSを設置する予定である。

フェデックスFSSの仕組み
フェデックスのFSSは、赤外線熱感知センサ、消火泡剤生成装置、および貨物コンテナ・オーバーヘッド・インジェクタを連動させたシステムである。センサが熱を感知すると、各貨物コンテナ上部に配置された消火システムが起動すると同時に、乗務員に向けて警告が発せられる。次いで金属製の貨物コンテナにインジェクタが挿入され、コンテナ内にアルゴンを主体とする生分解性の非腐食性消火泡剤を噴霧することで、数分で炎を消し止めるという仕組みである。消火システムが起動しても、消火剤の噴霧は火災が発生したコンテナ内のみに留まるため、他のコンテナには全く影響がない。パレット貨物の輸送の場合、貨物を覆う特製の難燃性ブランケットが貨物付近の酸素の量を制限し、火災の沈静に効果を発揮する。

認可取得過程を含めた多岐にわたるテストの結果、フェデックスのFSSは下記のようなさまざまな分類の火災に迅速かつ効果的に威力を発揮し、機体、乗務員、および顧客の荷物を守る性能を有することが証明されている。

  • 紙や木材といった通常材による火災(Aクラス)
  • ガソリンやケロシンといった引火性または可燃性の液体による火災(Bクラス)
  • リチウム、マグネシウム、チタニウム、カリウム、ナトリウムといった、非常に高温で燃焼する可燃性金属による火災(Dクラス)


現在航空機に搭載されている防火システムのうち、Dクラスの火災に対応できるのはフェデックスのFSSのみである。なお、電機機器などCクラスの火災を引き起こす可能性のある貨物については、引き続き機内の下層コンパートメントに別途搬入し、業界標準のハロン消火システムで対応する。

貨物空輸の安全を高めるフェデックスのFSS
現在、貨物機で一般的に採用されている消火システムは、乗務員が手動で起動させる必要がある。また、多くのシステムは、荷主によって「危険物」として指定され、ラベル付けされた貨物を入れたコンテナの火災のみに対応する。しかし実際は、「危険物」として指定されていない荷物からの火災が一番多く、このことが既存の消火システムの課題となっていた。一方で、フェデックスのFSSシステムは、その特徴的なオーバーヘッド設計と自動起動により、メインのフライトデッキ内の貨物コンテナまたはパレットで発生した火災はすべて鎮火でき、これまでの課題を見事に克服する。

このほか、現行のFAA規則には、飛行中に火災が発生した場合、直ちに機体を減圧し、最寄りの空港に緊急着陸させるという規定がある。これは、機内で火災が発生した場合、30分以内に着陸しなければ安全性が確保できないということを意味しているが、フェデックスの新しい消火システムを導入することで、長時間の国際フライトにおいて洋上飛行が3時間経過した場合でも、安全に迂回して着陸することが出来るようになる。

マードックは、「当社の新システムは、業界の安全水準をこれまでにないレベルにまで引き上げました。新システムの導入により、パイロットは機内を確認して状況を検証する時間を取ることができ、乗員、機体および貨物の安全性が確保されます」と述べている。

航空輸送の安全向上の歩み
安全性の向上を目指すフェデックスでは、FSS以外にも最新技術を導入している。2008年、フェデックスはMD-10およびMD-11型機用のヘッドアップ・ディスプレイ/エンハンスト・フライト・ビジョン・システム(HUD/EFVS)の認可を取得している。ハネウェル社およびエルビット・システム社と共同開発したこのシステムは、視界が悪い中での乗務員の状況把握力を向上するものである。なお、MD-11への配備は2009年1月に開始、MD-10にも順次配備される予定である。

当社は地上での安全にも配慮しており、最近では滑走路認識・助言システム(Runway Awareness and Advisory System)を配備した。これは、多くの空港で標準的に使用されている機能強化型の対地接近警報システム(Enhanced Ground Proximity Warning System)の改良版で、離陸、着陸、およびタキシング中に、滑走路や誘導路からの飛行機の実際の位置を、乗務員に聴覚警報で知らせるものである。